「家族がいない・疎遠な場合、遺言書と死後事務委任契約はどちらが大事?」と悩む方は多いですが、結論は“役割が違うため両方必要”です。

遺言書は財産の行き先を決めるもの、死後事務委任契約は亡くなった後の手続きを進めるものです。

どちらか一方だけでは不十分で、思い通りに進まないケースもあります。

本記事では、それぞれの違いと役割をわかりやすく整理し、一人暮らしの方が安心して備えるための具体的なポイントを解説します。


ひとり暮らしに必要な遺言書と死後事務委任契約の違い

一人暮らしで家族と疎遠な場合、亡くなった後については現実的な問題といえます。
代表的なのが空き家の放置や賃貸契約の未処理、公共料金の未払いです。さらに、葬儀の手配や遺品の片付けなども、対応する人がいなければ進みません。

また、相続人が遠方にいる、または疎遠な場合には各手続きが滞ることもあります。「誰かがやってくれる」と思っていても、実際には誰も動けないケースは少なくありません。こうした問題は、事前に準備していない場合に起こります。一人暮らしの方ほど、“死後の現実”を前提にした対策が必要です。

遺言書の役割

遺言書は、亡くなった後の「財産を誰に・どのように渡すか」を決めるためのものです。

遺言書は、預貯金や不動産などの分配を自分の意思で決めることができます。
言い換えると、遺言書がないと自分の意思は反映されない。ということになります。

また、せっかく遺言書を残しても、遺言書通りに執行する人がいないと放置されるリスクがあるので、「遺言執行者」を遺言書に残すことが大切です。
ぜひ遺言執行の仕組みと必要性をわかりやすく解説した記事も併せてご参照ください

死後事務委任契約の役割

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要となる手続きを第三者に任せるための契約です。
具体的には、役所への届出、公共料金の解約、賃貸物件の退去、葬儀手配、遺品整理などが含まれます。

一人暮らしの場合、これらを行う家族がいないことも多く、手続きが止まるリスクがあります。この契約を結んでおけば、あらかじめ指定した人がスムーズに対応してくれるため、周囲への負担も軽減されます。

ぜひ、死後事務委任契約の対応範囲と実務内容を詳しく解説したこちらの記事もご参照ください。


どちらか一方では不十分な理由とは

遺言書だけでは不十分

遺言書があれば安心と思われがちですが、それだけでは現実の手続きは進みません。
遺言書はあくまで財産の分配を決めるものであり、死亡後に必要となる実務は対象外です。

例えば、役所への届出や電気・ガスの解約、住まいの片付けなどは、誰かが動かなければ進まない作業です。一人暮らしの場合、これを担う人がいないと、空き家の放置や未払いの発生といった問題につながります。この点を理解していないと、将来の備えをしたつもりでも放置されてしまう事務問題が発生します。


死後事務委任契約だけでは不十分

一方で、死後事務委任契約だけでは財産の行き先を決めることはできません。

この契約は手続きを代行するものであり、「誰に財産を渡すか」という法的効力はありません。遺言書を作成しておかないと、財産は結局、法律に従って相続されることになります。

デメリットとして、財産を受け取ることになる相続人が協力的でないと自宅や預貯金などの財産がそのまま放置されてしまいます。


また、「お世話になった人にお金を譲りたい」と思っていても、その意思は実現されません。また、相続人が複数いる場合には話し合いが必要となり、トラブルになる可能性もあります。これらが死後事務委任契約だけでは足りない重要な理由となります。


一人暮らしの死後リスクと両方必要な理由


違いを理解すると見える“両方必要な理由”

ここまでのポイントを整理すると、遺言書と死後事務委任契約は役割が分かれています。ざっくりとした分け方ですが、遺言書は「財産をどうするかを決めるもの」、死後事務委任契約は「財産以外の事務が担当」というように使い分けるためにも両方必要なことが分かります。最後に具体的な使い分け例を下記に残しておきます。

遺言書と死後事務の具体的な使い分け例 その①

例えば、死後事務委任契約で片付けや葬儀などを行うと、当然費用が発生します。死後事務受任者は、その費用をその人の財産から使っても良いのでしょうか?
正解は当然NOです。先述のとおり、死後事務委任契約では遺産の清算をすることはできません。

このように、どちらか一方だけでは必ず不十分な部分が生まれます。“遺言書(執行者)”と“死後事務委任契約”の両方がそろって初めて、スムーズな死後の対応が実現します。これが「一人暮らしは両方必要」と言われる理由です。

遺言書と死後事務の具体的な使い分け例 その②

他にも、亡くなった方の自宅を片付ける場面を考えてみましょう。
王貞治のホームラン記念ボールのように、希少価値や金銭的価値があるものは「財産」にあたります。この場合は、誰に渡すかを決める必要があるため、「遺言書」で処分するのが適切です。

一方で、草野球で使用していたボールのように、むしろ処分にお金がかかる物は「財産」とは言えません。このようなものは、遺言書ではなく、片付けや整理として「死後事務委任契約」で対応しています。

このように、「価値があるものは遺言書」「日常的な整理は死後事務」と分けると良いのですが、現実には遺言書と死後事務の内容が重複することもあるので、どちらも用意しておくと安心と言えます。


かんき行政書士事務所ではどちらの相談にも対応可能

身寄りがない、または家族と疎遠な場合、亡くなった後の手続きが進まず大きな負担や混乱が生じる可能性があります。遺言執行では財産の分配を確実に実現し、死後事務では各種手続きや対応を円滑に進めることができます。どちらも重要な備えです。かんき行政書士事務所では、遺言執行・死後事務の両方に対応しておりますので、将来に不安のある方はぜひご相談ください。